環境・景観事業部で公園の維持管理の中でも大きなウエイトを占める芝や植栽のメンテナンスを専門に行ってきましたが、公園管理に官民連携の流れが出てきたのです。社内で特務チームを組織し、公園事業の一部請負から「全体」運営・管理へと受注範囲を広げる戦略を練りました。これまでいわゆる「B to B」のビジネスを行ってきた物林にとって、一般住民に対して直接サービスを提供とする「B to C」の公園運営管理事業を展開する上で、対処すべき多くの課題が出てきました。それらを解消するため社外専門家も含めたチームを構成、現場対応の中で知見を得ることで一つ一つクリアし公園管理者としての地力を伸ばした結果、本社所在地である江東区が新設した豊洲ぐるり公園の指定管理者に応募、選定されました。
　受託に際しては、東京都知事交代による豊洲市場の開場延期、それに伴い既に完成していた豊洲ぐるり公園も全面開放されない状態が続いたことによる指定管理者の選定凍結等、困難を極めましたが、地元で実績を作りたいという強い想いからヒアリングのために区役所に1年かけて通い続け、粘り強く提案書のブラッシュアップを重ねた物林はJV代表としての受注に成功しました。

　「豊洲ぐるり公園」の指定管理者となった物林はプロジェクトチームを母体に、ランドスケープ事業部を設立。公園の運営管理の経験を持つ人材を新たに採用するなど社内体制を整え公園運営を開始しました。

　数年前までは、公園内の造園管理に専門業者として参加していた物林が公園全体の運営を任され、更には子会社であるティンバースケープを設立し、木造レストランを建築しました。また、バーベキュー施設の設置、月例マーケットの開催による集客型の活性化や、公園内のガーデンを育てるボランティア活動を実施し地域住民の方と一体で公園のにぎわい創出にむけ取り組んでいます。
　豊洲ぐるり公園の管理・運営は2029年までの10年間となっていますが、公園周辺の住民、自治会、企業、施設との連携を深めて豊洲における当社の価値を高め、「豊洲の公園＝物林」のイメージと信頼を確立し、期間満了後に再公募された際には再度受注することを目標としています。江東区も豊洲ぐるり公園における公園管理事業を新たな運用モデルとして捉えており、活動次第では将来的に都内に留まらず、全国各地の自治体に向けたノウハウ提供やネットワークの紹介、事業への参画と新しいビジネス展開の道も拓けるかもしれません。

　近年は超大手の不動産会社や広告代理店、ハウスメーカーなどもPark-PFI制度を利用した公園管理に乗り出しておりライバルは数多く存在します。しかし、今まで造園業者として、公園建設・緑地管理に50年間取り組んできた実績、自治体・関連企業とのコネクションは物林の大きな強みです。蓄積した技術力に加え、公共性の高い公園の「賑わいづくり」への期待に応えるためには、それこそ今までの物林の枠に留まらない、新しい目線と発想でサービスを考え続ける必要があります。
　これから先も時代や地域環境、法律の変化などに柔軟に対応して事業を拡張できるよう、物林では「環境」「持続可能な社会」「未来」などをテーマにした若手社員中心の勉強会やレクリエーション活動などを行っています。加えて、管理運営事業に限らず、物林の全事業と連携し地域の特色に合わせたさらなる公園整備を計画、運営に向け取り組んでまいります。